何もかも憂鬱な夜は、俺はどうしたらいい?

 久々の投稿になったけど、今日はこの本を紹介したいと思う

 

何もかも憂鬱な夜に (集英社文庫)

何もかも憂鬱な夜に (集英社文庫)

 

 

概要

 


すかいうぉーかー🔥バルクアップ on Twitter: "生まれた意味なんてねぇかも、 でも、命は使うもんなんだよ そう教えてくれた ・人を殺してしまった人、死刑という償いを受けるまでのロスタイム ・死刑を執行する人 ・自殺した人(の記録) .. そんな角度から、「生きるってなんぞや?」という問いに、中村さんなりの考え方をぶつけてる内容っした… https://t.co/qEkxT8Bcsz"

 

 

ツイートにまとめたように、テーマは「生きるとは?」という問い。

登場人物からして重々しい内容ではあるが、

だからこそ角度を変えて考えることができる物語だったと思う。

 

登場人物の視点
 

  • 死刑を執行する人(主人公のぼく、主任)
  • 自殺した旧友、真下
  • 夫婦を殺害した死刑囚、山井

 

 

 

死刑を執行する人、死刑制度について

この本は「生きるとは」というテーマと、死刑制度への見方についても問いを与えてくれた。

 

死刑を執行したことのある主任の意見は、「死刑制度には反対はしないが、基準を明確にしてほしい。」という。

 

世間が殺せと騒げば死刑、そうでなければ死刑にならない。

被害者遺族の感情を推し量るべきだが、では容疑者が被害者遺族の場合は?

 

死刑を執行する立場の人間からしたら、容疑者はあくまでもただの他人で、一人の人間。

特別な感情を抱くことはないが、かと言って、執行することへの躊躇は拭えない。

 

ならば、基準をもっと明確にしてほしい。

そんなことを語っていた。

 

 

自殺した旧友、真下の手記

主人公と同じ施設でそだち、若い頃思い悩んだ末に、自ら命を絶ってしまった真下のノートについても命やその営みについて考えている描写があった。

 

人類の傾向は拡大だと思う。進歩と呼ばれているものだ。だけど、実際には、それはただの目的のない拡大に過ぎない。

(中略)

小さな人間の集まった、一つの大きな人間と考える。中には拡大の抑制を望むものもいるが、全体の傾向は、やはり拡大だ。拡大には、積み上げていく「善」だけでなく、無駄を破壊する「悪」がいる。

犯罪的な人間は、その「悪」が変形し、捻じ曲がってしまった亜種ではないだろうか。

 

 

刑務官のぼく

主人公は、施設で育った恩師からこんな言葉を受けている

 

これは、凄まじい奇跡だ。アメーバとお前を繋ぐ何億年の線、その間には、無数の生き物と人間がいる、どこかでその線が途切れていたら、何かでその連続が切れていたら、今のお前はいない。いいかよく聞け

現在というのはどんな過去にも勝る。 その アメーバとお前を繋ぐ無数の生き物の連続はその何億年の線と言う 途方もない奇跡の連続は、いいか?

すべて今のお前のためだけにあったと考えて良い

 

この言葉を受けて、主人公もやはり死刑囚の山井に死刑を執行するまで、いかにして生きるべきかを述べている。

 

俺が言いたいのは、お前は今、ここに確かにいるって事だよ。それなら、お前は、もっと色んな事を知るべきだ。お前は知らなかったんだ。色々なことを。どれだけ素晴らしいものがあるのか、どれだけ綺麗なものが、ここにあるのか。お前は知るべきだ 命は使うもんなんだ

 

 

世界には素晴らしいものが溢れていて、それは、ムカつく奴にも、ぼく自身にも平等に開かれている。

 

命はもっと使うべきだし、触れていくべきだと思う。

この本を読んで、ドン底から生きる意味を思い知らされた。

 

本当に何もかも憂鬱な夜は誰しもある。だが、その夜を乗り越えないと見れない景色はある。

 

憂鬱な夜に目を向けるだけじゃなくて、素晴らしいものに触れて生きたい。